研究科長挨拶
ごあいさつ
2010年代に入り、現代社会の特徴として「VUCA」が指摘されるようになりました。Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字をとった「VUCA」は、変化の早さや予測困難性を意味します。今の単純な延長線上に未来はないという認識です。例えば、この言葉が広く使われるようになる少し前、2007年にアメリカでiPhoneが発売されます。今の生活を考えてみれば、それがわずか十数年前の出来事とは思えません。数年あれば世界は変わってしまう時代に我々は生きています。
iPhone発売と同じ年に、北九州市立大学マネジメント研究科(K2BS)は設立されました。「VUCA」というまだ言葉は普及していませんでしたが、そのとき我々が考えていたのは先が読めない時代でいかにして環境の変化を機敏に捉え、素早く行動できる人材を育成するかということでした。K2BSの創設に合わせて発行したフリーペーパー『Agilitas(アジリタス)』は、機敏さや柔軟性を意味する英単語「agility」を語源としていました。不透明さと変化の速度は増しています。その中で、企業はどうすれば持続的成長を実現できるのでしょうか。個人はどのような能力を身につけていくべきなのでしょうか。
K2BSでは、理論的学びと現場的学びを重視しています。理論は進むべき方向性を見通す羅針盤として不可欠です。現場は自分の寄って立つ場所(課題)を把握するのに欠かせません。両者があってこそ、実践的に役立つ学びが可能になります。もうひとつ重視しているのは、主体的かつ相互に学ぶことです。ビジネススクールでは、教員が喋り続け学生は一生懸命にノートを取るという講義はありません。学生間で意見を出し合ったり、教員に質問をぶつけたり、チームでアイデアを構築したり、双方向型で授業は進みます。「わかった」ではなく「使える」、それが必要なことです。K2BSでの2年間は、日々の業務経験からだけでは習得に膨大な時間がかかるはずの能力を早く凝縮して得ることを可能にします。意欲溢れる皆さんをお待ちしています。
北九州市立大学大学院 マネジメント研究科長 松永 裕己